++ 転生黙示 ++ Chaos Magic
第一章 <逢遇>
不吉な影

20XX/07/12(月曜日) 不吉な影/東京都内 住宅街

灰色の雲が空を覆い尽くし、雨がザァザァと降っている。最近の天気予報で晴れという言葉は全く耳にしたことが無い。
今まで1ヶ月という長い期間雨が降り続いた事があっただろうか。


過去20年のデータを検証してみたが、これほどの大雨は記録に無かった。
最近よく言われる環境問題である異常気象も深く関係しているのだろうか。
しかし、どのニュースでもその事については取り上げていない。ただ季節外れの大雨ではないかという事だった。
降水量の多い地方では毎日のように警報が発令され、町には子供たちの姿は全く見られない。

風に傘を吹き飛ばされそうになりながら雨の中を歩く人々。車が水に浸かってしまい、往生している人々。見渡す限り、いつも同じ光景が目の前に繰り広げられている。



そして今日も俺は一人で家の窓から外を眺めている。
毎日雨が降り続いたせいか、家の中は、除湿をしても追いつかないくらい ジメジメしている。

「・・・耐え難い、苦痛だ・・・。」

そんな言葉が町の中から聞こえてきそうだった。
俺は、目を閉じて考え込んだ。




最近、テレビの特番で頻繁に採り上げられている文明崩壊の前触れではないか?と言う内容が妙に記憶に残っている。
中でも過去に存在したムー大陸とアトランティス大陸・・・今の我々も、これらのような結末を迎えるのでは・・・という話題が多い

世界崩壊説を唱えたノストラダムスの予言は1999年の時点で外れ、証明されたかのように思えた。しかし、一部の考古学者や研究者たちの間では、その予言は外れてはいないとか・・・だが、真偽の程は定かではない。


俺はそんな類の話には全く興味が無かった、いや心の何処かでそういう話を無理に避けていたのかも知れない。



恐かった・・・、夢の中の視線とが妙にリアルで現実と区別がつかなくなる時があるからだ。

************


3年前から同じ夢を何度も見る。光も差し込まない闇の中に独り立ち尽くしている。その先に見えるモノは闇だけ。
わずかに人の気配を感じる。
何故か俺は誰かに追われているような気がして走り出す。しかし足が重い。
闇が俺の背中に圧し掛かり、足取りは更に遅くなってゆく。
その闇の中から、わずかだが視線を感じる。



冷たい・・・・・・、背筋が凍りつくような感覚。俺はあたりを見回す。
しかし先に見える物は何一つなく、闇という大きな壁に阻まれて動く事が出来ない。
視線から逃れたい・・・・・・、しかしそれは許されない。
隠れたくても隠れる事さえも許されない。ただその闇と共存する・・・もしくは――――――。



いつもここで目が覚めてしまう。この続きは未だかつて見た事が無い。
俺は閉じていた目を開き、大きく深呼吸した後、自分のベッドに倒れ込んだ。そして、何をするわけでもなくただ天井を眺めていた。夢の事を考えながら・・・。



「トゥルルル・・・・トゥルルル・・・・トゥルルル」



突然けたたましい音で電話が鳴り響き、俺は一瞬で現実に引き戻され、目の前が白くなってしまった。
俺は受話器を取ろうとした、でも何故か手が止まってしまう。取っ手はいけない。そんな気がするのだ。
家には誰も居らず、電話に出る事が出来るのは俺一人だけだ。



「トゥルルル・・・・トゥルルル・・・・トゥルルル」



空白の時間が数秒・・・いや数十秒続いてもなお、電話が鳴りつづけている。俺が電話に出なければ鳴り止まないようにすら感じられる。
急な知らせでもあるのだろうか・・・まさか誰か事故にでも遭ったのだろうか。
しかし、いくら考えを正当化したところで電話に出る事は出来なかった。



・・・・・・5分間くらい経ったであろう。鳴り続いていた電話はピタリと鳴り止んだ。
俺は内心ホッとしたものの、先ほどの電話が何であったのかとても不安であった。
あとになって、電話に出なかった事に対する後悔の念が押し寄せてくる。


「くそ・・・・。」

俺は水をグッと飲み干した。

「そういえば、ここ最近電話というものに出た事が無いな・・・。」
出ないと言うよりはむしろ出られないと言った方が正しいだろう・・・大の大人が何を言っているんだ、なんて言われるかも知れないが、電話に出る事が恐いのだ。

「少し出かけようかな・・」俺はそう呟くと頭を冷すため雨の降る町へと出掛けていった。



「ふぅ」

俺は溜め息を吐きながら、雨の降る町を見渡した。
道を走っている車は大変少なく、今現在歩いている人間は俺以外にはいない。


・・・寒い・・・夏だというのに、今日の気温は12度を軽く下回っていた。
やはり異常気象なんだろうか・・・。
そうだ・・・そうに決まっている。

俺はそう自分に言い聞かし、重い足取りで近くの公園へと足を運んだ。



彼の名前は、峰神八雲(みねかみやくも)。都内の専門学校に通う19歳である。
彼の家は神社を営んでおり、彼の父親はここらあたりではちょっと有名な神主だったりする。父親の影響のせいであろうか、名前からは古風な感じが漂ってくる。
八雲は今年で19歳になる為、本来なら家業を継いで神主になる筈なのだろうが、彼の父親が曰く、私の代で神主は終わりにする・・・との事らしい。
息子のに自由な事をさせてやりたいという父親の配慮か、もしくはそれ以外に辞めなければならない深刻な理由があるのか、八雲も母親も親戚でさえもその理由は全く知らされていない。




灰色の世界・・・雨が降り続けるこの町はそう呼ぶにふさわしい雰囲気を醸し出している。
立ち並ぶ住宅街の窓からはほとんど明かりが見えない。
みな雨の降っていない安全な地方に非難しているのであろう。



50メートルほど先に小さな公園がある。子供のころはよくそこで遊んだものだ・・・。
1ヶ月ほど前までは、近所の子連れの主婦たちの溜まり場になっていたのだが、今では犬一匹いない状態だ。

あれこれしているうちに、公園の入り口の前にやってきた。

「・・・だよな、こんな天気だし誰もいないか・・・」

俺はそうつぶやき、公園を去ろうとした。しかし、ふと公園の隅のベンチに目をやると、そこに誰かいるのが目についた。
屋根の無いベンチで傘も差さず、じっと座っているのだ。
相手は俺の存在には全く気が付いていないらしく、微動だにしない。
まるで魂が抜けた人の抜け殻のようにさえ見えた。

いくら夏だとは言え、こんな天気のせいで気温は低いし下手すれば風邪を引いてしまう。
ここで遇ったのも何かの縁だろう・・・それにこんな状況じゃ無視できないしな・・・


俺はそう呟くと、人気の無い公園にあるベンチへと近づいていった。

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