++ 転生黙示 ++ Chaos Magic
第一章 <逢遇>
記憶の螺旋

20XX/07/12 (月曜日) 記憶の螺旋/東京都内 住宅街

痛い・・・

腕が・・・、足が・・・か・・・体全体が痛いわ・・・

一体何なの

くっ・・・あ・・・頭が割れるように痛い・・・


(・・・申し訳ありません・・・)


だ・・・誰?


(私がいながらこのような事になってしまって・・・)

「いや・・君が悪いんじゃない・・・すべては我々の判断ミスなんだ・・・」



・・・会話?誰かが会話しているの?女の人と男の人・・・・・・


(私にもう少し力があれば、こんな世界にはならなかったはず・・・)

「何を言っているんだ、君の力があったからこそ、世界は今の形を保てているのだからな・・・」



何の話をしているのかしら、世界がどうだのって・・・
全くわからないわ・・・どこかで聞いたことがあるような気はするんだけど・・・
でも一体どこで聞いたのかしら・・・。

・・・くっ・・・い・・痛い・・。

・・・・・・・・・頭が・・・

・・・・い・・いや・・・

・・・・いやぁぁぁぁぁぁ・・・・・




「・・・はぁ、はぁ、はぁ。ゆ・・夢かぁ。また同じ夢を見てしまったわ・・・。」


私はベッドから汗でベトついた体を起こすと、寝汗を流すためにバスルームへと足を運んだ。脱衣所で服を脱ぎ、そこにある鏡を覗き込んでニコッと笑ってみる。
しかし、ここのところ毎日見るあの夢のせいで、精神的に疲れているのか顔から元気がなくなってきているのが自分でもハッキリとわかった。



「咲夜?起きて来たの?」

キッチンから軽快な包丁の音と一緒に母の声が聞こえてくる。

「うん、汗かいちゃったからシャワーしようと思って。」

私がこう返事するのは何回目だろう。ここ1週間近く同じ事の繰り返しである。
私はシャワーを終え、着替えの服を身につけるとキッチンへと向かった。
キッチンにあるテレビからは、いつも同じようなニュースが流れている。


季節外れの大雨・・・であるとか、ついにノストラダムスの世界崩壊説再び・・・とかそういった話題しか取り上げられていない。
それも毎日同じような番組の繰り返しである。よく同じ内容を繰り返していても飽きないんだなと感心させてくれる。




彼女の名前は、楠咲夜(くすのきさや)。今年都内の高校に入学したばかりの16歳である。
今現在の時刻はAM10時を回ったところだが、この天気のため普段通っている学校が休校なのは言うまでもない。
咲夜が通っている高校は共学で、普段から活発な感じの咲夜はクラスの中では人気があり特に男子の連中の間ではモチロン人気ナンバーワンであった。でもそれを気取らずいつもマイペースになところが咲夜の良いところだった。


「・・・咲夜・・・咲夜?」

耳元から聞こえてきた声にハッとして横を見ると、心配そうな顔をした母が覗き込んでいた。

「最近元気が無いわよ、何かあったの?」

「・・・ううん、別に何もないよ。」

私は疲れた顔で出来る限りの笑顔を作り微笑んでみせた。

「・・・そぅ、それならいいんだけれど、最近顔色が良くないみたいだったし・・・」

「大丈夫、ホントに何も無いって、徹夜で勉強したりしてたからだよ。」



私は母に嘘をついた。最近見るあの夢が原因なのに・・・。
しかし、母に言ったところで信じてもらえるかどうか・・・それに母に余計な心配は掛けたくないという咲夜の心遣いであったのかもしれない。
それに何と言っても、この苦痛を分かち合えるのは自分しか居ないからだ・・・


私は焼きたてのトーストを口に運びながら、テレビから流れてくる声をただボーっと聞いていた。

「咲夜、私これから仕事があるから少し出かけるから・・・いい?・・夕飯はカレーを作ってあるから温めて食べてね。あ、そうそう留守番くれぐれも気をつけてね、ただでさえ女の子一人なんだから。出かけるときは戸締りを忘れないでね。あと、何かあったら携帯の方に連絡を入れて頂だい、急いで飛んで帰ってくるから。」

「うん・・・わかったーーー」


そう答えるのとほぼ同時くらいに、玄関のドアがガチャリと重い音を立てて閉じた。
母は、都内のテレビ局で働いているアナウンサーで、夕方のニュースに間に合うように今から出かけるわけだ。
そしてわたしはまた一人家の中でテレビから流れてくる無機質な音を聞いている。


************


私は夢の内容について、考えた・・・「あの夢の中の会話・・・絶対聞いたことがあるの。間違いないわ・・・ただそれがどこで聞いたのかがわからないのよ・・・」
そう心の中で呟くと、自分の部屋に戻ろうと、椅子を立ち上がった。
その時、再びあの会話が聞こえてきたのだ。しかし今度は頭は痛くならない・・・。ただそのかわりに、どこか別の世界のようなビジョンが目の前に現れたのだ・・・



宇宙空間のような闇、そしてその中に青く光る惑星“地球”が見える。

「これは・・・一体何なの・・・さっきまで家の中にいたはずなのに。」

焦る私をよそに、夢の中で聞こえてきたものと同じ謎の人物の会話が耳に飛び込んでくる。



(私は罰を受けます・・・自分の創ったこの世界に生きます)

「なに・・・そのような事を本気で言っているのか!!」



創られた世界・・・一体何のことだろう。でもこの会話までが私の記憶の中には存在し、懐かしさと思い出せない葛藤が入り混じり複雑な感情を呼び起こさせる。
なぜだか全くわからないまま、謎の二人の会話はすすんでいく・・・




「どうしても行くのだな・・・。お前が決めた道、その進み出した時計の針はワシには止められない。」

(1つお願いがあるのですが・・・)

「言ってみなさい、ワシに出来ることなら協力しよう・・・。」

(・・・私の・・・私の記憶をーーーーーーー)

「・・・・・・引き受けた・・・・・・ではしばしの別れを・・・・・この”地球”を頼む・・・」




・・・・何だったんだろう。記憶?ハッキリと聞き取れなかった。会話の内容は理解できないにせよ、どう考えても全ての会話において聞き覚えがあるのだ。



「・・・先ほどからそこにいる・・おぬし・・・何者よ・・・」

・・・えっ・・・

「答えよ・・・おぬしは何者よ・・・」


・・・・えっ私のことを言ってるのかな・・・でも向うの姿は見えないし。「どうしよう、怖いよぉ。でも無視するのも悪いし。」
私は心の中で決心を固め、返事をした。


「私の事?」

「そう・・・おぬしは・・・お・・・おぉ・・・まさかその声はーーーーーーーーではないか。」


なんだろう、私のことを知っているみたい、肝心の名前の部分は聞こえなかったけど・・・
私に話し掛けてきている人の姿はいまだ見えず声だけが聞こえてくる、というよりも頭の中で声が響いている感じだ。


「あなたこそ誰なの?私の事を知っているの?」

「・・・そうか、私のことを覚えておらぬか・・無理もない。おぬしの記憶は心の深部に封印したからのぉ・・・。しかし、よくこの時の狭間に来れたものよ・・・、本来ならここに来る事はどんな者でも不可能なはず・・・、魂が引き寄せ合っているのか・・。」

「ちょ・・ちょっと・・・記憶を封印したってどういうこと?・・・それに時の狭間って・・・・・」



「聞いていたのだろう・・・・・・私たちの会話を・・・。おぬしは生まれ変わりなのじゃよ・・・彼女の・・・。そしてここは時の狭間・・・何年いや何十年経っても同じ時が繰り返される場所・・・私と彼女は、この空間で同じ時を刻み続けていたのだよ・・・」


彼女?もしかしてさっきの会話のしてた人かも・・・。でもそんな事ありえないわ、だってさっきまで私あの人の声を聞いていたんだし・・・・
封印なんて・・そんなのマンガやゲームじゃないんだから・・・


「しかし、おぬしが時の狭間に来たことによって繰り返されていた時は終焉を迎えた。今まで抑制されていた時の流れは急速なる速さで流れ始めた・・・・・・そう、進み出した時計の針はもう止められないのじゃよ。」


時の狭間?一体何なの・・・ここは家の中じゃぁ・・・うん確かにさっきまで家の中にいたハズよね?そして気付いたらここにいて・・・もう訳がわかんない。


「彼女っていうのは誰なの?、さっきまであなたと話をしていた人?」

「そう・・・・・・彼女は古なる創造神の一人であり、大地の女神ガイアを知る者である。彼女の名はイヴ・ウォルス・・・おぬしはその生まれ変わりなのじゃ・・・」

え?・・・まさか・・・・・・・・・そ・・そんな・・・


声の主は話を続けてはいたが、私の耳には入ってこなかった。
私が創造神の生まれ変わりですって?自分のこの記憶が偽りかもしれない・・・、私の中にはもう一人の自分が眠っている・・・。今この世に存在している自分が本当の自分で無いかもしれないということが、私の心に重くのしかかってきた。
しかしその重圧に耐えられなくなり、二つの目から涙が零れ落ちてきた。

「わ・・私は誰なの、今あなたと会話している私は誰なのよ・・・ぅ・・」



「・・・・すまぬ・・・真相を伝えるには、まだ早すぎたのかもしれない・・・じゃが、ここに来たのも何かの縁であったのかもしれぬな・・・しかし皮肉なものよ・・・心の準備も出来ぬ間に生まれ変わる前の自分と出会ってしまったのだからな・・・。勝手にしゃべってしまった私のせいかも知れぬな・・・・・・じゃが時間はもう残されてはいないのだよ・・・」

「放っておいてよ!!!」


老人の会話を制し、腹のそこから思いっきり叫んだ。すると先程まで目の前に写っていたビジョンは消え、もといた自分の家の中に立っていた。
しかし、自分の目からは留まることを知らぬかのように涙が溢れてくる。


「・・・私は・・・・誰なの・・・訳がわからない・・・もういやぁぁぁぁ・・・」

すべてを忘れたいという、ただその一心で、何も考えず家を飛び出した。
しかし、特に行く当てはなかった、心が癒されるのならどのような場所にでも飛び込んでやる・・・そんな気持ちでいっぱいだった。

「・・・私は・・・どうすればいの・・・」


何度もそう呟いた・・・そして足は自然に進んで行く・・・子供のころから親しんだあの場所へと・・・、母親にしかられた時や友達とけんかした時よく行った場所・・・そして忘れられない出来事があった場所・・・



あれこれ10分近く歩いただろう。急いで飛び出してきたため傘はもってきておらず、着替えたばかりの衣服はもうびしょ濡れになっていた。



足が止まった先は公園だった。

雨は止む気配を見せず、弱まるどころか激しさを増している様にすら感じられた。
私は公園の隅にある古びたベンチに腰掛けると、自分では答えることの出来ない質問をただ心の中で繰り返した。


「私は誰なの・・・どうすればいいのよ・・・私は・・・私は・・・」と・・・

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